人生最大の買い物といっても過言ではない住宅購入。買主の方からすれば、是が非でも失敗するわけにはいかないでしょう。しかし、一般の方が住宅を見ただけでは、欠陥が潜んでいるかどうかの判断はとても困難です。そのため、近年では専門家にシビアな目線からの住宅診断を依頼する「ホームインスペクション」が普及しつつあります。今回は「ホームインスペクションとは?」という基本的な知識から、その必要性についてご紹介します。
まずは、ホームインスペクションの概要について触れていきましょう。「ホーム」は「家」、「インスペクション」とは「点検・検査」という意味です。つまり、ホームインスペクションとは、住宅の状態を調べる検査のことを指します。
人間に対する検査を医師などが行うように、ホームインスペクションにおいて家に対する検査を行うのは専門の業者です。彼らは「ホームインスペクター(住宅診断士)」と呼ばれ、不動産業者、買主のどちらにも依存しない第3者の視点から検査を行います。ホームインスペクションを実施し、検査結果に欠陥がないことが証明されれば、買主の方にとって安心な取引へとつながるのです。
前述した通り、ホームインスペクションは「家の検査」のようなものです。ホームインスペクションの検査内容は、依頼主の希望によって異なります。基本的には、ホームインスペクターが目視で雨漏り状況、建材へのダメージ、害虫被害の状況など確認し、必要に応じて専用の機器を使用したより精度の高い検査を行っていきます。
また、ホームインスペクションはあくまで「検査」であり、建物の「治療」までは行いません。買主の方は、ホームインスペクションの結果を受け、建物の欠陥を確認した上で購入するか否か、価格は妥当か、といった判断に利用します。売出価格によってはその後、欠陥を修繕する費用を考えても魅力的な物件があるかもしれません。つまり、ホームインスペクションは単に住宅の欠陥を見つけるためだけではなく、取引の幅を広げるためにも役立ちます。
日本国内でホームインスペクションのニーズが高まった背景には、近年日本で相次いだ大型地震の存在があります。中古住宅などは現在の耐震基準を満たしていないことがあり、地震により破損・倒壊してしまう可能性はゼロではありません。そのような住宅に住む方や、中古住宅の購入を考えている方がホームインスペクションを依頼するケースが増えているのです。
新築であれば大抵の場合、耐震基準を満たしているでしょう。しかし、建物の構造によっては地震によるダメージの可能性を捨て去ることはできません。また、日本のどこが次の震源地になるかわからない今の状況では、新築住宅の耐震性を確認しておくことは事前の安心にもつながります。
アメリカ、イギリスなどの海外では、住宅購入前にホームインスペクションを行うことがほぼ常識となっています。日本国内では必ずしも常識といえる状況ではありませんが、入居後に欠陥が見つかり責任の所在が不透明になってしまうことや、「住宅のコンディションを正確に知っていれば契約しなかったのに…」という後悔などのリスクを回避するためには、やはりホームインスペクションを依頼したほうが賢明でしょう。これは、中古住宅だけではなく新築住宅の購入の場合も例外ではありません。
マイホームは一生に一度の買い物。ご家族と共に入居される場合は特に、家のコンディションが家族全員の快適さや健康に関わってきます。「ご家族全体のリスク回避」という観点で考えれば、ホームインスペクションを依頼することは非常に重要です。